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宙が生み出す無限の創造性
──俳優・井浦 新が語る、
“時間”という名の宇宙

井浦新と腕時計の正面写真

壮大な宇宙に想いを馳せ、そこからインスピレーションを受けて作られたブランド「カンパノラ」。
「宙鏡(そらかがみ)」は、日本古来の漆芸を用いて文字板を表現した特別なコレクションだ。
今回は、日本の伝統工芸にも造詣の深い俳優・井浦 新が、その魅力をナビゲートする。

宙に想いを馳せ、時をまとう

人々はさまざまな理由から宙(そら)を見上げてきた。朝日が一日の始まりを告げ、日が沈めば労をねぎらう。
また、夜空を彩る星々には、その配置を神話上の動物や神々に見立て、物語を生み出した。
シチズンのカンパノラは「宙」に想いを馳せる人のために作られた時計だ。
宇宙の誕生とともにたゆまず流れてきた時間──古代、未来、そして現在。
悠久の時の流れ、宇宙が魅せる無限のきらめきを一本の時計の中で表現している。
そんな情趣を備えた時計をまとうのは、俳優・井浦新。
大河ドラマなどで、千年もの時間を超えて役柄を演じることもある彼に、カンパノラについて、
そして時間という概念について語ってもらった。

腕時計をつけた井浦新が窓から外を眺めている写真

Teruo Horikoshi(TRON)

肌に馴染む“漆黒の青”

今回登場するカンパノラの「宙鏡(そらかがみ)」は、
「宙空の美」というデザインコンセプトを持つ。文字板には日本古来の伝統的な技術である、漆芸の技術が生かされた。

「今日身につけた腕時計は、どれもミッドナイトブルーというか、深い紺色がとてもすてきで、
漆を使って仕上げているというのも魅力的ですね。個人的にはとてもセンシュアルなイメージを持ちました。また月の満ち欠けや星々が美しく表現されていて、そこにも強く引かれます」

特に螺鈿(貝殻の輝く層を薄く削り出し、漆器に貼り付け、装飾とする技法)を用いた文字板については「月明かりの中で見るとまた違って見えるんでしょうね」と感嘆交じりに応えた。

腕時計を身に着けている井浦新のモノクロ写真

Teruo Horikoshi(TRON)

「光の当たり具合でだいぶ見え方が変わると思います。いろいろな輝きを楽しめそうですね。
また青の色味も光によって変化するので、文字板を見る度に楽しめそうだなと。
青って一言では言い表せないほどいろんな表情があると思うんです。
僕が一番印象に残ったのは、“漆黒の青”。
華やかな明るさではなく、どちらかといったら深い、日本の伝統色のような青にとても近い、
日本人の肌に合う色だなと感じました。夜って厳密には黒じゃないですよね。
月の明かりによって照らされた世界というか。深いミッドナイトブルーが腕元にあって、
とても落ち着きます。
非常に洒落た、すてきな色を表現されているなと思います」

腕時計を身に着けた井浦新が椅子に座っている写真

Teruo Horikoshi(TRON)

BU0020-20Lの写真
Watch 01 ECO-DRIVE BU0020-20L

宇宙から届く光を、
腕元で動力として享受する

太陽の光や室内の光を電気に換えて駆動させるシチズン独自のテクノロジー「光発電エコ・ドライブ」を搭載したモデル。宇宙から届く光を
エネルギーに換えて時を刻むという点でも、ロマンあふれる一本となっている。トリプルカレンダーとムーンフェイズを備えており、6時
位置のサブダイヤルには金属粉を混ぜた紺漆で、星々が瞬く様を表現した。さらにそこには美しい満ち欠けを表す月が輝くという、非常に凝ったデザインとなっている。

屋久島の森の中で感じた宇宙

井浦さん自身、昔からさまざまなモノづくりに携わってきた。アパレルを起点に、写真の展示を行い、
現在ではオーガニックコスメブランドのプロデュースも手がけている。
彼も時の流れや宇宙といったものからインスピレーションを得ることはあるのだろうか。

螺旋階段に立つ井浦新の写真1

Teruo Horikoshi(TRON)

螺旋階段に立つ井浦新の写真2

Teruo Horikoshi(TRON)

螺旋階段に立つ井浦新の写真3

Teruo Horikoshi(TRON)

「インスピレーションというか、モノを作る上では欠かせない要素の一つですよね。地球自体が宇宙から生まれたものでもありますから。直接的に宇宙をモノとして表現したことはないのですが、以前、旅先でとても神秘的な体験をしたことがあります。屋久島の森の中に入って行った時に、その静けさの中で、植物や動物、昆虫たちの密度をひしひしと感じて、命の無数のきらめきに触れました。ふと宇宙の存在を意識する瞬間があったんです」

腕時計を身に着けた左手で顔をおさえている井浦新の写真

Teruo Horikoshi(TRON)

「その時に、フォレスト(森)と、アストラ(宇宙)という言葉をくっつけて、フォレストラっていう造語をつくりました。それで、屋久島の植物や動物をモチーフに、テキスタイルを作ったことがあります。
森の中にある宇宙を感じて作ったので、空からの直接的なプロダクトではないんですが、でも、その宇宙という存在は、いろんなものをクリエイトしていく上で、無限の可能性を秘めているものだと思っています」

NZ0000-58Lの写真
Watch 02 MECHANICAL NZ0000-58L

スイスの技術と日本古来の美学が
溶け合う

会津漆の伝統工芸士・儀同哲夫氏の⼿によって表現された漆芸による文字板は、もはや芸術作品と言っても過言ではない出色の出来栄えで、アートとしての洗練も漂わせる。漆にプラチナ粉を蒔いて研ぎ出すことで深い星雲の揺らめきを演出し、螺鈿(らでん)や蒔絵(まきえ)で銀河の煌めき描き出した。心臓部には名だたるメゾンブランドの機構も手がける、ラ・ジュー・ペレ社の機械式ムーブメントを搭載。日本とスイスのクラフツマンシップが見事に融合した。

時を超えて通じ合う心と心

カンパノラの「宙鏡」は、宙に色々な思いを託した平安時代の詩人たちの詩歌からもインスピレーションを得ている。大河ドラマではその時代を生きた人物を演じたこともある井浦さんだが、過去の人物を演じる際には「その人物への敬意を最も大事にしている」という。

左腕に腕時計を身に着けた井浦新の横顔写真

Teruo Horikoshi(TRON)

「“過去の人物”とは言いますが、その時代を実際に生きていた人たちなんですよね。実在した人物を演じるうえで何より大切にしているのは、まずその人への敬意です。敬意を持って向き合うために、まずはその人物のことを深く知るところから始めます。いろんな角度からその人を調べて、知識を重ねながら、しっかり向き合っていく。できる限りそのプロセスを繰り返します。

でも、どれだけ知識を得て演じたとしても、やっぱりその人自身にはなれないんです。ただ、知ろうとする行為を重ねていくことで、演技が少しずつ深まっていくんです。たとえば、芝居を通じてその歴史を追体験するような感覚の中で、時間そのものは超えられないとしても、 “この出来事が起きたとき、この人はこんな感情を抱いたのかもしれない”と、そういう心の部分には近づける瞬間があると思っています」

左腕に腕時計を身に着けた井浦新がプラネタリウムを見ている写真

時間と心。時を超えて実在の人物を演じることで、存在の枠を超えて魂が共鳴する瞬間がある。

「距離をほんの少しだけ縮められる可能性があるのは、心のほうなんです。もちろん、時間そのものを縮めることはできません。だからこそ、実在した人物を演じるときは、その人そのものにはなれないけれど、その人が感じたであろう心情をつかみ取り、芝居を通して追体験することで、少しでも心に近づくことができたらと思いながらいつも演じています。その心の在り方こそが、きっと、どうしても縮められない“時間”というものを超えていけるのかもしれない。少なくとも、僕はそう信じています」

AH4080-01Mの写真
Watch 03 COMPLICATION AH4080-01M

想像力を掻き立てる4つの機構を搭載

ムーンフェイズ、クロノグラフ、パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーターという4つの機構を搭載したグランドコンプリケーションモデル。文字板をぐるりと囲む五徳リングが多層的なイメージを創出し、青漆の文字板と銀河の輝きを表現した螺鈿が、唯一無二の存在感を放つ。時計というひとつの宇宙(サークル)の中に、さらに4つの宇宙が存在するかのようなデザインで、想像力を幾重にもかき立てる一本だ。

PROFILE
1974年生まれ。98年に映画『ワンダフルライフ』で初主演。
以降映画を中心にドラマ、ナレーションなど幅広く活動。また映画館を応援する「MINI THEATER PARK」や、
アパレルブランド「ELNEST CREATIVE ACTIVITY」のディレクター、サステナブル・コスメブランド「Kruhi」の
ファウンダーを務めるなど、その活動は多岐にわたる。TBS系7月期金曜ドラマ「DOPE 麻薬取締部特捜課」に出演予定。

Model /Arata Iura
Photo /Teruo Horikoshi(TRON)
Styling /Kentaro Ueno(KEN OFFICE)
Hair & Make-up /Eriko Yamaguchi
Video Director / Yuki Fujinaga
Cinematographer / Hideaki Sakurai
Gaffer / Yasuhiro Ote
Video Producer / Tomonobu Yamamoto
Text / Ryuta Morishita
Edit / Mikiya Otsuka(Esquire)