常田俊太郎が奏でる、
海と時の調べ
壮大な宇宙にインスピレーションを見出した腕時計ブランド「カンパノラ」。なかでも「宙鏡(そらかがみ)」は日本古来の漆芸を取り入れ、一本ごとに職人たちの手仕事が息づく特別なモデルである。今回この時計と向き合ったのは、音楽家であり、経営者としての顔を持つ常田俊太郎。雄大な海を舞台に行われたフォトセッションでは、波の音とヴァイオリンの旋律が豊かなハーモニーを奏で、双方の美学が溶け合った。
精緻な職人技に、小さな宇宙を見る
忙しない日常から離れて、雄大な海に身を任せる。「宙空の美」というデザインコンセプトを持つカンパノラは、まとまった休暇はもちろん、束の間の休息のひとときにも寄り添い、時間そのものを“愉しむ”人に向けられた時計である。
今回、この時計と対峙するのは、クラシックと現代的な音楽シーンをつなぐ取り組みや、アーティストを支援する事業で経営者としても活躍する常田俊太郎。幼少期から音楽の道で才能を開花させ、現在は弟であるアーティスト、King Gnuの常田大希とともに、クリエイティブ・プロジェクト「MILLENNIUM PARADE」を手がけている。
腕時計「BU0020-20L」¥385,000(カンパノラ/シチズンお客様時計相談室 tel.0120-78-4807)シャツ¥123,200(マリナ イー/ノースリバティ pr@northliberty-inc.com)中に着たリメイクシャツ¥38,500(done/DIGG 03-6206-4616)中に着たプルオーバー¥46,200(ディフォー dddd@nobuokaholdings.jp)パンツ¥52,800(コッキ/コッキデザイン事務所 eye-khoki.com)シューズ¥84,700(アデュー/バウ インク 03-6427-1590)
そんな彼だが、祖父はカラーテレビ黎明期の著名なエンジニアであり、自身も幼い頃から”機械いじり”を好んでいたという。
「父も祖父もエンジニアでしたので、その影響もあると思うのですが、小さい頃はいろんなものを分解するのが好きでした。ドライバーなどの工具を渡されては分解して、また組み立てる。そんなことをよくやっていて、時計にも自然と触れていたと思います。それが時計との最初の出会いだったと記憶しています」
カンパノラの「宙鏡」は、文字板に日本の伝統技術である漆芸の装飾を取り入れている。常田はその第一印象について「引いて見た時と、身につけた時の印象がまったく違う」と語ってくれた。
「ぱっと見た印象は、意外とベーシックで、さまざまな服装に合わせやすいデザインだと思いました。ですが、実際に腕に着けて間近で見ると、かなり細かな意匠が施されていて驚きました。レイヤー構造になった文字板やムーンフェイズの機構、分針や秒針の美しさなど、本当に芸が細かい。引きと寄りで、まったく異なる表情を見せる時計だと思いました」
漆芸の繊細な表現はご覧の通りだ。職人がひとつひとつ手作業で絵柄を描き出しているため、同じものはふたつとして存在しない。
この日、常田は自身のヴァイオリンを持参して撮影に臨んだ。
「ヴァイオリンの弓にもいろいろありますが、僕が使っているものは鼈甲製です。素材が違えば響きも変わりますし、時間の経過とともに乾いてきて、音も少しずつ変化していきます。この時計にも同じような繊細さを感じました。
また、歴史的に見れば時計という文化そのものは海外から入ってきたものですが、そこに日本古来の工芸文化が融合している。そのあり方に、自分の活動とも重なる部分を感じましたし、そういった意味でもシンパシーを覚えました」
AIの時代に芸術の唯一性を改めて見つめ直す
カンパノラは、平安の世を生き宇宙に思いを馳せた詩人たちからインスピレーションを得ている。彼の活動においても、宇宙から着想を得ることはあるのだろうか。
腕時計「NZ0000-58L」¥1,320,000(カンパノラ/シチズンお客様時計相談室 tel.0120-78-4807)ジャッケット¥368,500、パンツ¥144,100(ともにマリナ イー)重ねたスカート¥66,000(ジュリー ケーゲルス/以上すべてノースリバティpr@northliberty-inc.com)ボウタイ付きシャツ¥63,800(ロルフ エクロス/バウ インク 03-6427-1590)シューズ¥100,100(アデュー/バウ インク 03-6427-1590)
「直接的ではないかもしれないですが、宇宙や時間というものについて考えることはありますね。単純に星を眺めたりというのもそうですし。太陽系ってとてつもない大きさですが、その先に広がる銀河系、さらには無限に近い宇宙全体から見ると、ほんの一部だったりします。
ですが、ミクロレベルに視線を戻すと、例えば日本中に広がっている道路。これには多くの人が携わり、膨大なリソースと時間を費やしてできたものです。時間や宇宙について考えていたつもりが、いつの間にか日常へと戻ってくる。考えれば考えるほど面白いものだと思います」
時間を知るだけならスマートフォンで事足りる今、時計に求めるものは何か。それは、ロマンや情緒といった類のものになるだろう。
「やっぱり感情や情緒にまつわる価値を求めているんだと思います。おそらく、その根底には技術だったり、これまで積み上げてきた歴史的蓄積への希求がある。便利になればなるほど、アイデアやデザインも含めて、情緒的な価値はむしろ高まっているように感じますね」
それは、AIが社会に浸透していく時代において、芸術が持つ唯一性を改めて見つめ直すことにもつながる。
「AIなどの技術に関しては肯定的に捉えています。楽譜は読めないけれど曲を作っている人もたくさんいますし、それはすごく好ましいことだと思っています。新しい才能もAIの進化によって出てくるんじゃないかなと。一方で、AIに頼らないアウトプットも同時に追求していきたいです。ライブやコンサートは、やはり人と人が関わって生まれるものなので。AIで完璧に演奏されたものをスピーカーで流すだけというわけにもいきませんから。環境の変化を楽しみながらやっていくほうが、より幸せに過ごせるのかなと思っていますね」
好奇心とともに、未到の地を切り開く
今回の撮影は、水平線がどこまでも続く遠浅の海辺を舞台に行われた。海と宇宙。両者ともに、いまだ解明されていないことが多い未知の領域である。人類は古くから海の先を目指し、そして今は地球を飛び出して宇宙へと歩みを進めている。その飽くなき探究心について話を向けると、常田はこう語った。
腕時計「AH4080-01M」¥495,000(カンパノラ/シチズンお客様時計相談室 tel.0120-78-4807)ジャケット¥85,800(コッキ/コッキデザイン事務所 eye-khoki.com)シャツ¥52,140(ロード スコフ/バウ インク 03-6427-1590)パンツ¥50,600(トルク/トルク ラボ 03-6384-5672)バッグ¥160,600(ジュリー ケーゲルス/ノースリバティ pr@northliberty-inc.com)
「やっぱり人間って、今の枠から出ていきたい衝動を持っている生き物だと思っていて。音楽でも、クラシック音楽の文脈でいうと和声というものがあり、長い時間をかけて築かれてきた調性のルールの中で美しさを追求してきました。でも、その可能性をさらに押し広げようとする中で、シェーンベルクらが無調音楽を生み出し、調性から自由になろうとする流れも出てきました。さらに言えば、ジョン・ケージは『4分33秒』のように、音楽そのものの定義を問い直す作品も生み出しています。こういったことは、おそらくどの分野でも起きてきた事象でしょう」
「コロンブスが活躍した時代は海の向こうがフロンティアでしたが、20世紀に入ると地球の外はどうなっているのだろうと考えた人たちが現れ、月にまで到達した。物理的な広がりもそうですが、あらゆる分野で、今までこれが枠だと思っていたものを乗り越えて、外へ出ていきたい、拡張していきたいと願うのが人間なのかなと思います」
PROFILE
1990年、長野県生まれ。幼少から音楽に親しみ、高校卒業後に東京大学工学部へ進学。コンサルティング会社勤務を経て独立し、株式会社ユートニックを創業。アート・エンターテインメント領域におけるアプリケーションの企画やメディア・コンテンツのプロデュース、コンサルティングに携わる。アーティストとしては編曲家・ヴァイオリニストとして活動し、King Gnu、Vaundy、米津玄師ら人気アーティストの楽曲に参加。ハイブランドや美術展への楽曲提供も行うなど、その活動は多岐にわたる。
- ●問い合わせ先
- シチズンお客様時計相談室
TEL 0120-78-4807
Model / Shuntaro Tsuneta
Photo / Seiji Fujimori
Styling / Arisa Tabata
Hair & Make-up / Hiroko Ishikawa(eek)
Videographer / Yuzuru Nakatani
Video Producer / Tomonobu Yamamoto(HEARST DIGITAL JAPAN)
Text / Ryuta Morishita
Edit / Mikiya Otsuka(Esquire)